2019年3月

3月某日

神泉の「円山茶家さくら」へひさびさ。親戚のおばさんちの気軽さで寄るも、黒龍、繁桝、十四代本丸と飲みすすめたころ、うっかりキャッシュオンの代金出し忘れ「800円ねっ」と指摘されたときは股間のあたりがヒヤッとした。親しき店にも礼儀あり。この日の特別メニューはキーマカレー。もち米のジンジャーライスで頂く。「おかわり食べてって!」と言われ2杯目をたいらげたらお腹がパンパンに。9時すぎ帰宅してバタンキュウ就寝。

3月某日

よい天気。どこかへ出かけたかったが花粉症と肋間神経痛で断念。近所のヤング軒で散髪。推定80歳のマスターがゆっくり、丁寧に刈ってくれる。かえりしな、シャンプーブラシを「使ってよ」と頂く。夜は十条苑で馬刺ユッケ、生ビール、黄桜山廃冷酒。NHK津波特集を観る。

3月某日

朝パンとコーヒー。昼は新馬場の北品川弁当で肉そば+生卵。昨年末のある日、そばに卵を入れ忘れられていらい、足が遠のいていた。屋号をランチハウスから変更したタイミングでメニューが軒並み値上がりしたが、肉そばはなぜか50円も値下がりした謎の店。この日はあとから来たお客さんがチャイムを何度鳴らしても店員さんが現れず、しまいには怒って帰ってしまった。よい店なんだけど。夜は常備菜としてアスパラ・ベーコン・じゃがいもの炒め物を作る。はじめての割にはまずまずの出来。冷凍庫がいっぱいなので、買い置きの日清冷凍担々麺を消費し、炒めものはそっくり冷蔵庫に入れて後日のおかずに。

3月某日

朝出社時に突然ネクタイの結び方がわからなくなる。パソコンで要領を調べるが、あせるいっぽうでさっぱりうまくいかない。なんとか格好つけてでかけるも、自分の将来はどうやらさして長くなさそうと、ぼんやり死の宣告を受けた気分になる(いつかはみんな死ぬのだけど)。

3月某日

昨年4月に死んだ父親の納骨で神戸へ。舞子墓園にある神戸教会の納骨堂へ信者さんたちと一緒に納めて頂く。キリスト教は牧師さんの説教が哲学的でためになり面白い。宗教哲学者、ガブリエル・マルセルを知る。母親、妹、甥っ子と別れ京都へ。河原町に宿を取り、「土筆」「galaxy500」で鯨飲。

3月某日

宿酔に苦しみながら18きっぷを使い西へ。姫路で途中下車して、山陽鉄道に乗り換え亀山で下車。中華料理「鳳来」で半チャンラーメンを頂く。ひろしさんのイラスト入りメニューがあちこちに貼られていて、ついつい見入ってしまう。その後も鈍行を乗り継ぎ、陽がすっかり暮れたころ広島到着。雨降るなか、早歩きで居酒屋を探すが、日曜なので空いている店が少なく難儀。ようやく銀山町「端島」のノレンに飛びこみ晩酌にありつく。新鮮お刺身にぬる燗。ひたすら落ち着く。西村晃に似た静かなマスターに伺うと、このお店は年末を除いてほとんど毎日営業されているとのこと。あとから来た常連さんは、昼間に釣ったタイをマスターに渡してさばいてもらい、できあがったタイづくしをおいしそうに召し上がっていた。あとで調べたら、「ワカコ酒」作者オススメのお店だった。

3月某日

JRフェリーで安芸の宮島へ。名所とあって外国人観光客が多い。厳島神社の敷地をひととおりめぐったあと、ヒマにあかせて弥山を登る。運動靴だけで装備もなにもなかったが、なんとかなった。高尾山よりはややきつかった印象。帰りはロープウェーを使う。柳井からフェリーで松山へ。二番町で昔行ったお店が開いていなかったので、有名な大衆酒場「小判道場」へ。満席だったがお客さんに詰めていただいて末席を確保する。隣にいあわせたインドネシアの方と意気投合して、おたがいの職場事情をあれこれ話す。関西エリアを担当する観光業界の営業マンで、日本語検定N1を持っている超エリート。ところがしだいにお酒のピッチが早まると、だんだん彼の体が接近しだし、膝タッチなどあやしい感じになってきたので、意を決して、自分はノンケだと伝えると、ひどく落ち込まれ、なんだか申し訳ない気になる。じっさい、なんと言ったらよかったんだろう。すっかり前後不覚になった彼は、まもなく部下に抱えられ店を出ていった。

3月某日

今日中に帰宅しなければならないので、高松まで高速バスを使い時間短縮。昼メシに「丸亀名物骨付鳥弁当」を購入。3月末で販売終了らしい。瀬戸大橋線の車内でさっそく食べると、車両がゆれまくって食べづらいことこのうえない。四国で駅弁がはやらない理由がすこしわかった気がする。夕ぐれに大阪着。梅田「川上」へはじめて。入るなり、ママさんから「ウチにきたの?」と怪訝そうにいわれるが、話しているうちに打ち解けていただける。趙博さんの本(パギやんの大阪案内ぐるっと一周〈環状線〉の旅)を見てきたことを伝えると、安心してもらえたようだ(紹介されてたことじたいは知らなかったらしい)。最後は新大阪始発の新幹線自由席でぜいたくに帰京。

3月某日

ひさびさ同級生のレモン君に誘われ五反田「呑んき」で飲み。むかしは会えばバカ話しかしなかったのに、いまでは親の介護やら自分の老後の見通しやら、暗いおっさん話題が中心に。レモンくんはストレス太りらしく、ずいぶんガタイがふくらんでいた。もう一軒いこうとなり、ふだん昼によく行く「祥龍餃子房」へ。夜もはんじょうしている。

3月某日

会社帰りに四谷アウトブレイク突然段ボール太陽肛門スパパーンのツーマンを観に行く。ライブハウスの音響はさすが迫力が違う。蔦木さんがギターで参加した「オリンピックに出たい」がすばらしかった。思いのほかコンパクトに終わったので、打ち上げまで参加。終電で帰宅する。

3月某日

「あゆみ」で飲み。ゴーヤがあったのでお任せで野菜炒めを作って頂く。みちこさん、ふみえさん(いずれも母親とおなじくらいの年齢)とひさしぶりに再会、そのままスナック「HUMAN」に誘われ深夜コースに。記憶なくす。

3月某日

前日の深酒で宿酔。外出する気力もなく、古いNASからのデータ吸い出しを終日試みるが失敗。Macbookからではどうにも無理そう。ため息つきながらCDを整理していたら、なくしたと思っていた嗚呼!情熱実験つみつくりのCD-Rを発掘。珍曲「花の実験稼業」を聴いて元気を取り戻す。

3月某日

板橋の「明星」へ。先客の常連さんが花粉症悪化とのことでぼくと入れかわるように帰ってしまい、ママさんと二人きりに。テレビで昔の笑点BS日テレでやってる)やNHKの歌謡番組を見ながら、ときどきママさんと話したりして、静かに飲む。なかなか次のお客さんが来ないので、日本酒4本空けたところで切り上げる。踏切をわたり「マンマの店」へ。数年ぶりにママさんと再会。覚えていてくれてうれしい。明星でのんだ酒がまわったのか、その後の記憶なし。

3月某日

飯田橋ギンレイホールへ。1本目の濱口竜介寝ても覚めても」は、冒頭に主人公カップルがバチバチっとわざとらしく運命の出会いをする場面から、これはまったく自分向きの映画じゃないと悟り、チケット代を少しでも取り戻せるよう"よかった探し"に努めるも、とにかく主人公たちの行動・思考が不可解すぎてなんら魅力を感じられず、ひたすら胸のむかつきがつのるばかりで徒労におわった。もしかしたら、ミヒャエル・ハネケ黒沢清のように、お客を不快にさせる系の「芸術」なのかもと想像するが、いずれにせよ自分にとってはまっぴら近づきたくない世界のお話だった。もう1本の「孤狼の血」は意欲作ではあるけれど、土地柄や差別など、裏社会の抱える社会的バックグラウンドの描写が甘すぎるように感じた。悪徳警官役の役所広司、どうせ最後は良い人でおわるんでしょと思っていたら予想以上の善人でがっかり。後輩・松坂桃李の報告書にダメ出しをする場面で、書きことばなのに語尾が「〜じゃ」の広島弁を使っていたのは何かのギャグか?とあきれた。「アウトレイジ 最終章」もそうだったけど、ピエール瀧に関西人の役をやらせるのは無理がある。

3月某日

十条苑でいつもの馬刺ユッケ、ガツ刺し、ナムルのコース。冷酒はいつもの黄桜生酛が売り切れとのことで、かわりに濃姫の里隠し吟醸。2本頂く。9時のNHKニュース、最初がイチロー引退、二本目が「もし富士山が爆発したら?」街角インタビュー。世界中で重要な出来事がたくさん起こっているというのに、一体どういうことか。「こんなのニュースじゃない!」とおもわず口に出してしまう。ふだんテレビを見ている人にとっては、「なにを今さら」なんだろうけど。

3月某日

休日。なんとかたまった洗濯ものを処理する。夕方池袋へ。古書往来座飛浩隆「自生の夢」、酒井直樹「ひきこもりの国民主義」購入。ジュンク堂道満晴明メランコリア(下)」、植芝理一「大蜘蛛ちゃんフラッシュバック(3)」,沙村広明波よ聞いてくれ(6)」、シリル・ベジャン編「ディアローグ デュラス/ゴダール全対話」を購入。そのあと栄町通りの「酊八」へ。2回目。ママさん階段で頭打ったらしく、少し落ち込みぎみ。40代の友達に電話して悩みを聞いてもらっているらしい。5月の連休も何日かやるのでまたきてねといわれる。

3月某日

18きっぷを使い東海道を西進。車中でゴダールとデュラスの対談本を読む。13時半頃片浜で下車し、週末だけ営業する「書肆ハニカム堂」へ。山田太一「街で話した言葉」、瀧波ユカリ・犬山 紙子「マウンティング女子の世界: 女は笑顔で殴りあう」、くとうてん発行「ほんまに 第16号」を購入。店主はこの日は着物姿。前に一度きたことを覚えていただいていた。コーヒーをごちそうになりながら、店主秘蔵のLPを聴かせて頂く。古本屋さんに来たというより、サブカルに詳しい部活の先輩の部屋におじゃました感覚。楽しかった。15時過ぎの電車で静岡へ。水曜文庫で小西昌幸編「ハードスタッフ11号」、山本善行「関西赤貧古本道」、関川夏央二葉亭四迷明治41年」を購入。あべの古書店で永岡慶之助「斗南藩子弟記」、村井吉敬「スンダ生活誌―変動のインドネシア社会」、山口瞳編「人生の読本」を購入。安川書店で大西巨人荒井晴彦「シナリオ神聖喜劇」購入。太田書店で加藤直樹「九月、東京の路上で」を購入。車町の「たっちゃん」でビール、日本酒と、タイ刺。帰りの車内は飲むことなくハードスタッフを読んで過ごす。24時頃帰宅。

3月某日

大崎百反通りの「再会」へひさびさに。いつも通りママさんがいて、常連さんがいて、何も頼まなくてもいろんなつまみが出てきて、いつのまにか酔っ払う。ママさんから「色は悪いけど…」と出された本マグロがほんとうにおいしかった。

3月某日

朝食ヤクルト1本。昼は品川港南口の一休食堂で生姜焼き定食。夜は久しぶりの自炊。人参と大根の味噌汁、納豆ご飯、生餃子。ドミューンに接続して「DJPlays“電気グルーヴ”ONLY!!!!!」を聴きながら、先日買ったメランコリア波よ聞いてくれ、大蜘蛛ちゃんフラッシュバックを読む。