ライブハウスで供される日本酒は一升瓶で用意してあるところが多く、そのままでは冷蔵庫に入らないので、たいてい常温で放置されている。老ねた銘酒をうやうやしくコップに注がれ、半合あるかないかの量をライブハウス値段でちびちび飲むのは、なかなか辛いものがあるが、それでも日本酒党としては、メニューに載っているかぎり、頼まないわけにはいかない。
過去にライブハウスで飲んだ日本酒の中で、一番よかったのは、下北沢シェルターの高清水だ。2018年5月22日に太陽肛門スパパーンのライブを観に行き、200mlのコップ酒をしこたま飲んだ記憶がある。値段は一杯650円だったと思う。今もあるのかわからないが、状態のよくない高級酒よりも、鮮度の保たれた大衆酒を飲ませてもらえたほうが、個人的にはありがたい。
日本酒はできることなら冷蔵庫に保管してもらいたい。吉祥寺マンダラ2ではいつも一ノ蔵無鑑査がきちんと冷蔵されていて、枡にたっぷりこぼしてもらえる。阿佐ヶ谷ハーネスに時たま置いてある日本酒は、銘柄は知らないけれど抜群においしい。国立地球屋の澤乃井も、リーズナブルで大好きだ。
僕のよく行く大久保ひかりのうまには、浦霞が常備されている。ある夜、「ほたるたち」の穂高亜希子さんが店のお手伝いをされていて、浦霞を注文したら、「ロックですか?」と聞かれたので、一瞬とまどったあと「ストレートで」とお願いした。穂高さんは少しぎこちない手つきで、ムーミンのイラスト入りの可愛いコップに、一升瓶をかたむけてくださった。こんな幸せってあるんだなあと思った。